
ヨランダ・ジョウ 「超人類化への畏れ」
MIKKALはこのたび、ヨランダ・ジョウ個展「超人類化への畏れ」を開催いたします。本展では、過去二年間に制作された映像作品と写真作品の二点をご紹介します。 ヨランダ・ジョウは現在、オックスフォード大学ラスキン・スクール・オブ・アートに在籍し、ポスト人間中心主義とポスト物質主義を軸に制作を展開しています。高度数学を学んだ背景に導かれ、ジョウは分析的でありながらも、それを内側から揺さぶる独自の視点で美術に向き合っています。自らを「オブジェクティスト(Object-ist)」と称する彼女は、人間の視野の周縁にひっそりと存在する、些細で静かなものたちとの能動的な対話を試みています。 ジョウの制作は、対象や素材に対する強いフェティシズムから出発しています。古びたもの、擦り切れたもの、渦を巻くもの、そして逆説的に「無用でありながら役に立つもの」。彼女の手の中で、それらは人間の合理性の内部に取り残された、歴史的かつ感情的な残響となる。異なる空間的文脈を横断しながら、ジョウは産業素材に埋め込まれた硬直した功利的論理を裂き、その内側に留まり続ける象徴的な「亡霊」に触れようとしている。 本展のタイトルにもなっている映像作品《超人類化への畏れ》(2025)は、アメリカのジャーナリスト、ルル・ミラーによる著書『魚が存在しない理由』を出発点としています。本作は、人間が分類という行為へ向けてきた尽きることのない欲望をめぐり、サイバーパンク的な世界観の中で交わされる二人の一人称的な会話として展開します。半魚半人のキャラクターに対する皮肉から始まる対話は、宗教、人間の慣習、そして発話者自身への気づきへと移行しながら、ポスト人間中心主義的な想像力を拡張していきます。 一方、写真作品《ファーマーズ・マーケット》(2026)では、野菜のイメージが人間の生活空間へと持ち込まれることで、ある種の共生関係が静かに提示されます。野菜の新鮮さと、エレベーター内部の冷たい反射との唐突な対比は、人間の不在を際立たせます。しかしその不在によって、むしろ私たちの視線そのものがいかに「人間的」であるかが浮かび上がります。 MIKKALの初企画であり、ヨランダ・ジョウにとって初個展となる本展を、ぜひご高覧ください。